ウォール街のランダム・ウォーカー⑤

プロスペクト理論

通常金額が損失のほうが利益よりもはるかに望ましくないものと受け止められる。

多くの投資家が損失の発生している銘柄を持ち続けるのは、やがて株価が回復し、後悔の念を回避できると期待するからだ。自尊心と後悔の念を回避したいという願望が強いため、投資家はしばしば損している銘柄を保有し続け、儲けの出ている銘柄から手放す。

こうした損失回避行動は、合理的な投資理論の下では明らかに最適な選択ではない。値上がり銘柄を処分すればキャピタルゲインが発生する。一方、値下がり銘柄を処分する場合はキャピタルゲインは発生せず、ある範囲で他の値上がり益と相殺できる。値下がりしている銘柄が近い将来値上がりする可能性が大きい場合でも、とりあえず処分して損失を出し、値上がりの期待できる同様なリスクカテゴリーの他の銘柄を新たに購入すればよい。

 

・過度の売買を控える

個人投資家は自信過剰で、健全な財産管理上は不必要な売買を繰り返す強い傾向がある。売買コストはかさみ、実現益に対する税金が確実に発生する半面、得るものは何もない。

 

・どうしても売る必要があれば儲かっている銘柄ではなく、損している銘柄を売れ

プロスペクト理論より、損失を避けるためには利益を上げようとする時よりも遥かに大きなリスクをとる。売らないという意思決定は、現在の株価で買うということと同じ。もし損失が出ている銘柄をフルに課税される投資の一環で保有している場合には、売れば税法上損失が計上でき、課税対象所得額を減額する形で、政府が損失の痛みを和らげてくれる。